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2012/01/14 配信

日本ホリスティックアカデミー・メールマガジン No.16
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    「ヒプノの青い鳥---本来の自分を発見する癒しの旅へ」
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■トピックス

 【1】ワイス博士の前世療法プロトレーニング(7月 in New York)
 【2】出雲で学ぶヒプノセラピー・前世療法
 【3】出雲国神仏霊場
 【4】瞑想と祈り
 【5】「アラスカの夏」(村井啓一)連載(4)
 【6】メールマガジンの配信解除

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【1】ワイス博士の前世療法プロトレーニング(7月 in New York)

ブライアン・ワイス博士の「前世療法プロフェッショナルトレーニングコース」が2012年 7月23日(月)~27日(金)の5日間で開催されます。場所はニューヨーク州ラインズベッ クにあるオメガ・インスティチュートというスピリチュアル・スクールです。

この講習は誰でも自由に参加できます。5日間を通して連日ワイスさんの講義とグルー プセッションを受けたり、実際にワイスさんが個人セッションのデモを行う姿を見ることが できます。

例年は年2回開催のところを昨年2011年は夏のみの開催でしたので、通常の定員 (120名)を大幅に越えた160名が世界中から参加しました。大人数なのでいつもの英 語での全員の自己紹介はありませんでしたが、ワイス博士が世界の各地域ごとに参加 者を立たせて全員をまとめて紹介してくれました。

2011年夏の講習は日本からは15名が参加しました。四日目にはワイス博士夫妻に 日本人参加者との集いに参加していただき、全員が楽しい歓談のひとときを過ごしまし た。

今回2012年7月の講習会にも日本ホリスティックアカデミー(JHA)代表の村井が参 加する予定です。講義はすべて英語で行われますが、英語が苦手な方でもこれまでに 大勢参加されています。前世療法について基本的知識をお持ちの方はワイスさんのセッ ションを見るだけでも価値あるものと思います。

このメルマガ読者の方でワイス博士のトレーニングに参加される方(ご希望の方)には、 村井から以下のサポートをご提供させていただきます。

1)ニューヨークのJFK空港からオメガまでの往きのバス便とオメガからNY市中まで の帰りのバス便を特別にチャーターしますので、一緒に行きたい方は同乗していただ きます。オメガへの参加が決まりましたらJHAまでお知らせください。(約3-3.5時間: 費 用は往復で80ドル程度の人数分割り当て実費)

2)オメガで困ったときにサポートいたします。(講習の通訳はありません。)

3)毎日夕食後のブリーフィングを開催して、その日のワイス博士の講習内容を日本 語で解説します。

4)ワイス博士ご夫妻と日本人メンバーとの歓談会を毎回ワイスご夫妻にお願いして います。ご夫妻の予定がありますので、確約はできませんが、希望がかないましたら ワイス夫妻との歓談会に参加していただき、サインを貰ったり、ご夫婦と写真を撮った りして密な時間を過ごしていただけます。これまで毎回時間を取っていただいています。

JHAでツアーを組むことはしていませんので、参加希望者はご自分でオメガのウェブ サイト(http://eomega.org/omega/workshops/13efad2435167ecca8ecd9fd45f7d210/) からお申し込みください。まずはこのページの登録(Registration)ボタンをクリックして必 要事項を記入して登録を済ませて、そのままお申し込みページに入ってお申し込みくだ さい。

オメガに参加申し込みをした後で、オメガから1-2週間以内に「eConfirmation from Omega Institute」という件名のメールが来れば予約確定です。一人部屋を希望される 場合はなるべく早く申し込まれることをお勧めします。また、例年2月末辺りで予約が満 杯でキャンセル待ちとなっていますので、ご注意ください。

また、ワイス博士の講習に参加される方で1)のチャーターバスをご利用される方は早 めに村井(murai@holistic-work.com)にまでお知らせください。よろしくお願いいたします。

ワイス博士の癒しを肌で感じたい方は是非7月にご一緒しましょう。

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【2】出雲で学ぶヒプノセラピー・前世療法

2012年3月に島根県出雲市でヒプノセラピー・ベーシックコースと前世療法一日ワー クショップを開催します。神々の里・出雲で、催眠療法を学びたい方、またご自分の潜在 意識の内面に向き合ってみたい方はご参加ください。

 <日程>
 3月16日(金)ベーシックコース・初日
 3月17日(土)ベーシックコース・2日目(最終日)
 3月18日(日)前世療法一日ワークショップ

ベーシックコースは催眠療法の基本である暗示療法とイメージワークを学びます。この コースは米国催眠療法協会(ABH)と国際催眠連盟(IHF)から認定を受けていますので、 コース修了後にテストと課題提出を行うことによって両協会の認定を受けることも可能で す。(認定費用は別途必要です。)

前世療法一日ワークショップは丸一日をかけて、催眠の初歩的な理解を得ながら前世 療法にとって必要な基本的技法を習得していきます。午後の後半にはペアを組んで実際 に前世療法を行います。

詳しいご案内とお申し込みはこちら(https://www.jh-academy.com/izumo/index.html)の ページから。

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【3】出雲国神仏霊場

出雲で受講された後、時間のある方は是非古くからの社寺を巡ってみてはいかがでしょ う。出雲の20社寺を巡るガイドサイト「出雲国神仏霊場」(http://www.shinbutsu.jp/)には、 由緒ある神社・仏閣が紹介されています。

ここに紹介されている各々の社寺を巡ると各社寺の朱印と護縁珠が授与されます。縁 結び、子授かり、安産、家内安全、諸願成就、殖産興業、延命長寿など様々な御利益が あるという20社寺です。

心を楽にするために社寺を巡り、御利益を自己暗示としてご自分に与えるのも効果が期 待できる方法です。

また、このサイトには各社寺の紹介(住所、案内、行事、縁起等)に加えて、巡拝の礼儀 や基礎知識なども紹介されています。

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【4】瞑想と祈り

私たちは神性につながるために2つの方法をとっています。一つが「瞑想」で、もう一つ が「祈り」です。

自分自身の心の中の神性は潜在意識の奥深くにあって、地球意識・宇宙意識ともつな がっています。つまり心の中の神性につながるということは、自分の内には地球があり、 宇宙があり、神があることを悟ることなのです。

瞑想は、自分自身の内側に意識を向けて、潜在意識の深奥を確認しようとする行為で す。そこにあるものを心の眼で見ようとし、そこから聞こえる音を心の耳で聴こうとし、そこ から感じるものを心の感覚で感じようとします。自分自身の心の中の神性につながって、 そこからのメッセージを確認するのです。

祈りは、自分の外の大いなる存在、宇宙意識に向かってメッセージを送ろうとする行為 です。それはまた、自分の外にある宇宙の神性につながろうとする行為でもあります。自 分の外の大いなる存在につながり、そのつながりの中で、声や思いや願いや様々な方法 で大いなる存在にメッセージを伝えるのです。

瞑想や祈りで、手をどう重ねるとか足をどう組むということは瑣末なことです。自分にとっ て楽な姿勢、つまり大いなる存在とのコミュニケーションをとりやすいリラックスした姿勢を とればよいのです。 

瞑想も祈りも究極はどちらも、内向きと外向きという一見正反対の方向性で、宇宙の神 性、すなわち自分自身の神性につながろうとする行為なのです。

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【5】「アラスカの夏」(4)  (村井啓一)

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・これは村井がアラスカ大学大学院に留学していた1980年代の
ある初夏にエスキモーのキャンプ地で過ごした体験を記したノンフィクションです。       

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 全員がテントの外に据え付けてあるテーブルの周りについた。大きな鍋に入った残り 物の鱒のシチューを食べ、めいめいがコーヒーや紅茶など好きな飲物を入れる。食べな がら数ヶ月振りの情報交換をする。長い冬の間は、各家族とも互いに連絡の付けようの ない離ればなれの生活を送ってきたので、久し振りに会う身内や友人たちと積もり積もっ た話に花が咲く。

   特に近年はCB(シチズンズ・バンド)ラジオの普及が著しく、各家庭とも早朝からスイッチ をいれっぱなしにして話をしたり聴いたりしている。ここで使われているCBラジオとは十二 ボルトのカー・バッテリーを電源とした三十キロ範囲内に電波の届く無線機のことだ。

送話ボタンを押して話せば声が送れ、スイッチを入れて同じチャンネルに合わせておけ ば誰でも話を傍受できる仕組みになっている。チャンネルは二十三あるうちから一つ選 べるが、シソーリック一帯ではどの家も普段はチャンネル十六につまみを合せている。 CBラジオはいつでも通じている電話のようなものだ。しかも簡単な電源さえあれば免許 もいらずどこででも使えるのでボートに備えている者もいて、漁場と家との連絡にも利用 されている。

 冬を孤独との戦いのなかで過ごした人々にとって、CBラジオを通しての交信は砂漠の はてに得た水のようなものだ。乾きが癒えるまで延々と話をつづける。ケリーも毎朝起き るとすぐにCBラジオのスイッチを入れ、日課のようにして朝と夜に親族の姪や孫たちの 一人一人に挨拶コールを送っている。

 多くの日本人がテレビ中毒症にかかって一日中テレビをつけっ放しにして暮らしている のにも似て、この地域のエスキモー、特に女性は終日CBラジオ中心の生活を送っている。

 しかし、CBラジオはそれだけのためにあるのではない。情報網の発達していないシソー リックではCBラジオをつけっ放しにしておくことがいつなんどき役にたつかわからないのだ。 相互依存、相互扶助のエスキモー社会では迅速な情報流通が非常に必要とされる。

 エスキモーの女たちもただ一日だべっているのではない。どこそこの家で怪我人がでた、 と聞けばとんでいって手当をし、ウグルックが捕れたというニュースが入れば手伝いに行 き、お裾分けをもらってくる。

 チャンネル十六は言わば公共の伝言板として使われている。また、プライベートな話が あれば、前もって時間とチャンネルの番号を打ち合わせておいて交信することもでき、CB ラジオはもはや彼等にとって必要不可欠のものとなっている。

 シソーリックはクルーセンスターン岬国立モニュメント内の南端に位置している。クルー センスターン岬国立モニュメントは一九八〇年にカーター大統領によって指定された総面 積九千七百万エーカーのアラスカ内の公園や野生動物保護区のうちの一つだ。

 クルーセンスターン岬国立モニュメントだけでも五十六万エーカーの広さがあり、これは 東京都の総面積よりも大きい。また、同じd-2土地法案の立法化によって、今までマッキ ンレー国立公園と呼ばれていた静岡県ほどの大きさの公園はデナリ国立公園兼保護区 となり南北に拡張され、総面積は従来の百九十四万エーカーから五百六十九万六千エー カーに膨れあがった。これは四国全土に富山県を加えた程の広さだ。

 そして、アラスカ内の国立公園、或いは国立公園並の扱いを受け国立公園局の管理下 にある十三の公園等の面積を合計すると五千百十九万六千エーカーにも達し、実に日本 の総面積の五十五パーセント以上に当たる。

 国立公園では景色や野生動植物などを保護しレクリエーションとしての利用価値を保全 しなければならないので、採鉱や伐採などの資源開発が許されていない。勿論狩猟も禁止 されており、自動車類のエンジン付乗物の乗り入れも限定された区域にだけ許可されてい る。そして保護区ではスポーツ・ハンティングがアラスカ州の規制に基づいて許可されるこ と以外は国立公園と同様の管理を受けている。

 だが、一九八〇年以降に新しく国立公園としての指定を受けた区域のなかには、アラス カ原住民が長く住み続けた土地が含まれている所があり、そういう区域では国立公園の管 理基準も現状に即して対処されることとなった。

 新しく国立公園やモニュメントに指定された領域内に暮らしていた原住民たちにとっては、 その土地の木を伐ったり狩りをしたりして自給自足の生活を送っていけるかどうかが大問 題であった。

 そして結局、先住者の特権として公園内であっても今まで通りにスノー・マシーンを使った り、狩猟や伐採などの自給自足活動が許されることになった。しかし住民たちにとってみれ ば、元々自分たちが先祖代々使ってきた土地を勝手に連邦政府の土地にされてしまい、し かもそこを勝手に公園として扱うように決定されてしまったのだ。

 公園として指定されることによって、その土地の住民が多大な規制を強いられることは疑 う余地がない。卑近な例をとれば、もしも公園内に住む人が自分の土地に金鉱を発見した としても、そこが国立公園内である以上はその人に採鉱権は与えられない。住民としては、 いくら国立公園に指定されたとしても、その中での今まで通りの生活様式を当局が認める のはごく当然の事なのだ。

 バートたちが去り、浜辺は静かになった。海上遥か彼方の水平線が氷壁のように見えて いる。水平線の浮氷が上空に反射して見えているのだ。

 テントの横で斧をふるって薪を作っていたボブが手を休めた。
「手紙では六月の二十日頃が野花の開花の最盛期だと書いたが今年はどうもかなり遅れ る気配だ。今年は例年になく五月に寒い日が続いて出かかった若芽が止まってしまったん だ。花を楽しみにきているのに残念だな」

 ボブは割った薪を私の横の屋外用ストーブにくべた。私は丸太の輪切りに腰掛けてストー ブにあたっている。ストーブには大鍋がのせてあり、細かく刻んだハンノキの樹皮が煮込ま れている。深紅とも深紫ともつかない液が沸き立っている。この液を使って毛皮を染色する のだ。

 鍋から立つ蒸気が強い北西風によって水平に流されていく。沖に残る流氷群を通過して くるこの北西風は刺すように冷たい。ボブから雪が降ったと聞かされてもさほど驚かなかっ たのもこの風のせいだ。

 今すぐに雪が降ってきたとしてもおかしくない。体表から熱が飛び去っていくのが感じられ る。熱を補うために熱いコーヒーを飲む。

 ボブが続けた。
「例年になくと言っても同じことの起こる年などないのだが、今年は特に夏が遅い。しかし、 この二、三週間のうちにこの辺もガラッと変わって、いろんな植物がどんどんと出てくるし、 それとともにここの生活もあわただしくなって、ケージにも新しい経験をしてもらうことにな るだろう」
「もう新しい経験ははじまってますよ。アザラシをみたし、流氷も見た。しかしこの風さえな ければ最高なのに」
「いや、物は考えようさ。この風で確かに寒い。しかし、ストーブにあたれば暖かい。もし風 がなければ蚊がでてくる。風がないとストーブなしでも暖かいが蚊に刺される。果たしてどっ ちがいいかな」

 そうだ、蚊のことをすっかり忘れていた。今はこの強風のために雑草の下に潜んでいる 蚊の大群が風の衰えとともに出没してくるのだ。ここの蚊は黒々と大きく、しかも動きが素 早い。

   バートの捕ったアザラシをケリーが解体しだした。ウルというエスキモー女性の専用ナイ フを使っている。ウルは扇型をしており、曲線部分に刃がついている。握りの部分はセイ ウチの牙を加工して作っている。このケリーの使っているウルはケリーの父親のホイッティ アー・ウィリアムズが三十年以上前にこしらえたものだ。刃の部分は二十センチ程の長さ がある。

 エスキモーの女たちは実にうまくウルを使う。まだ小学校にもあがらないような少女が小 さなウルを巧みに使って肉を切り、そのままウルをフォークがわりに口元におしつけるよう にして肉を食べる。エスキモーの女はみんな自分のウルを持っていて、いつも手入れを怠 らない。

 ケリーがボブを呼んだ。ボブが私にも来るように言い、ストーブにもう一本薪を入れて立 ち上がった。ケリーは右手にウルを持ち、左手をアザラシの肩のあたりに置いている。ア ザラシの下にはダンボールがしいてある。そして棒を三本地面に突き刺し、それに縦一 メートル、横二メートルぐらいのベニヤ板を二枚組んで防風用にたてかけている。陽射し はわりと強いので、この防風区域では、ぽかぽかと暖かい。

 このアザラシは小さいので、ケリーはハンティング用の携帯バッグを作ろうとしているの だ、とボブが説明してくれた。

 ケリーがアザラシの首の周りを皮の厚さ分だけぐるりとウルで切り込み、切れた肩口側 の皮についている内側の脂肪をそぎとっていった。それから、袖口で額の汗を拭うと、ケ リーはボブに何事かエスキモー語で頼んだ。

 ボブが、かぎ棒の尖った先をアザラシの頭部に引っ掛け、棒を押さえた。反対側からケ リーがアザラシの肩口の皮を両手で握り、そのまま引っぱると、まるでセーターを脱ぐよ うにスルッときれいに毛皮が裏向きに剥がれた。

 あとは水かきの所でくっついているのを切り取れば、小さな穴が四つ(前足二つ、水か き二つ)ついた袋ができあがる。その穴を縫いあげれば完全防水のバックになるのだ。  「ゴム製のヒップ・ブーツが入ってくるまでは、満一歳ぐらいの小さな斑入りアザラシを 二頭このようにして皮を剥いで、防水用ズボンを作ったものだった。そして、同じく斑入り アザラシの毛皮でブーツをこしらえて足元から腰まで完全防水の備えをした。しかし今で はもう誰もアザラシのズボンやブーツを作らなくなってしまった」

「どうして作らないのですか?」
「理由? 一つには以前のように三月頃から氷が完全に消え去るまで毎日のようにアザ ラシ猟をしなくなって、ズボンやブーツを作るのにぴったしのアザラシがそう簡単に手に 入らなくなってしまったからだ。それにもう一つ、毛皮のズボンやブーツを作るのは女性 にとっては辛く時間のかかる手間仕事なので、今のように手軽にゴム・ブーツやヒップ・ ブーツの手に入る時代に誰もあえて昔のものを作ろうとしない」

 ボブは更に続けて、
「エスキモーのカヤックだって同じことがいえる。昔は流木で骨組みを造り、それに大き なウグルックの毛皮を張りつけてカヤックをこしらえたものだった。しかし、今ではベニ ヤ板と市販の材木とで楽々と棺桶のようなボートが造れてしまう。しかもこのほうが持 ち運びに便利だし、使わないときにその辺に放っておいても鼠にかじられることもない。 もう誰もウグルックのカヤックなど造らなくなってしまったんだ」

 ケリーは毛皮の裏側に付着している脂肪をきれいにけずりとり、木製の樽の中へ一 片一片入れている。この脂肪からシール・オイル(アザラシ油)が抽出される。

 シール・オイルと一般に呼ばれている油はエスキモーにとって大変重要な意味を持つ。 二年前に始めてシソーリックの近辺に来たときに、あるエスキモーの家で昼食を御馳走 になった。食卓に大きなビンがおいてある。その中に黒いすじのような肉片や緑の葉が 透明な油に浸してある。その家の主の勧めるままに、その黒光りする細い肉片と葉を 皿にとって、その上に油をかけて食べた。

 その肉はウグルックとセイウチのものだった。私は黒い艶のあるウグルックの肉片を かじりながらこの油の軽く柔らかな舌ざわりを楽しんだ。この、私にとっては無味無臭に 近い油がシール・オイルだった。

 しかし、この油が体内に吸収されるにつれ、手足がじんわりと温かくなっていった。長 い間戸外にいて体の冷えきっていた私は、肉に飽きると塩気のないホワイト・フィッシュ (白身の淡水魚)の日干しを皿に残ったシール・オイルに浸けて食べた。

 私がシール・オイルを食しているのを見たその家の主人は嬉々としてこう言った。
「あんたは日本のエスキモーだ」
私が黙っていると、
「シール・オイルを気にいれば我々の仲間だよ」

 エスキモーにとって、シール・オイルが特別の意味をもっていることを、そのときに知っ た。真冬の厳寒期を無事に乗り切るには、体に暖を与えてくれる食物が必要不可欠と なってくる。また、たとえ夏であっても、海獣猟に出掛けるときや強風の吹きつけるとき には、体をしっかりと温めてくれるものが絶対に必要だ。人間の体も燃焼機関なのだ。 エスキモーにとって肉体の保温に最も役立つ食物がシール・オイルだ。

 その経験をボブに話すと、ボブがこう付け加えた。
「日本人のケージがシール・オイルを好んで食べているのをみたらエスキモーは驚くだ ろう。エスキモーと結婚した白人のなかでも何年たってもシール・オイルを好きになれな い者もいるんだから。それに、シール・オイルにはもっと別の意味があるんだ。

 今では、エスキモー社会にも白人社会の食物がたくさん入り込んできて、野鳥の代わ りにチキン、アザラシやカリブーの肉の代わりにポークやビーフを食べるエスキモーが 増えてきた。

 だがエスキモーは、エスキモーがエスキモーである所以はシール・オイルで食事をす ることにある、と考えている。だから、どんな大都市に住んでいようが、食事にシール・ オイルを使っているあいだはエスキモーとしての精神を保っている、と他のエスキモー からも見なされる。

 しかし、その反対に、この辺に住んでいてもシール・オイルを食べなくなったエスキモー はエスキモーであることを放棄したものと見なされる。シール・オイルはエスキモーの精 神とアイデンティティに複雑に結び付いた主要食なんだ」

 私はエスキモーとシール・オイルとの関係を日本人と米のようなものかと考えた。だが 米に果たしてシール・オイルのような強烈な民族のアイデンティティとしての文化的役割 があるだろうか。米をたべない日本人は日本人でない、などど本気で考える日本人が いるだろうか。

 米はけっして日本人のアイデンティティになりえないだろう。エスキモー社会は白人と の接触以来つねに白人文化によって無理やり与えられ、変えられ、そして奪い取られ てきた。その屈辱の歴史のなかで、エスキモーが保ち続けてきたエスキモーの生活の 根源にシール・オイルがある。

 シール・オイルは虐げられてきたエスキモーの人々の生活、文化の象徴なのだ。白人 文化に対抗するエスキモー精神の最後の砦にエスキモー食がある。白人の食物には存 在しないエスキモーだけのもの。それがシール・オイルだ。

 ボブが更にこう付け足した。
「エスキモー社会にはいってきた余所者でも、シール・オイルを食べられる者はエスキモー から割とたやすく受け入れられるが、シール・オイルを食べない者はなかなか受け入れ られないんだよ」

(つづく)  

    (つづく)

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【6】メールマガジンの配信解除

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