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2012/05/20 配信

日本ホリスティックアカデミー・メールマガジン No.17
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    「ヒプノの青い鳥---本来の自分を発見する癒しの旅へ」
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■トピックス

 【1】ワイス博士の前世療法プロトレーニング(7月 in New York)
 【2】「7ステップ自己実現法」のDVD発売
 【3】ヒプノセラピーのDVD出演希望者を募集
 【4】「一般社団法人日本臨床ヒプノセラピスト協会」設立
 【5】「アラスカの夏」(村井啓一)連載(5) 
 【6】メールマガジンの配信解除

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【1】ワイス博士の前世療法プロトレーニング(7月 in New York)

ブライアン・ワイス博士の「前世療法プロフェッショナルトレーニングコース」が 2012年7月23日(月)~27日(金)の5日間で開催されます。場所はニュー ヨーク州ラインズベックにあるオメガ・インスティチュートというスピリチュアル・ スクールです。

本日現在で既に同コースは満員となっており、キャンセル待ちを受け付けています。

日本からこの講習に申し込まれた17名の方から村井宛に連絡が入っております。 それ以外の方でも、参加を申し込まれた方でニューヨークの空港からオメガまでの チャーターバスを利用されたい方は村井にまでメールでお知らせください。

またオメガに参加申し込みをした後で、オメガから「eConfirmation from Omega Institute」という件名の本予約の確認メールが届いていない場合は村井にお知らせ ください。

なお、このコースは特別キャンセル条項が適用されます。コース開始日の45日前 までにオメガにキャンセルを申し出た場合は100ドルのキャンセル処理費用を引いた 金額が返金されます。もしも45日前までにキャンセル通知をしないでキャンセルを した場合は返金されませんのでご注意ください。

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【2】「7ステップ自己実現法」のDVD発売

「村井啓一のヒプノセラピー方法論:DVDシリーズ」の第1弾として「7ステップ 自己実現法」(定価:本体8,000円+税)を制作しました。

7段階のステップにより、わかりやすくそしてより一層実践的に自己実現セラピーを 解説しています。実際のセッションシーンも収録しており、7つのステップを順番に 追いながら目と耳でセッション内容を把握できるようにつくられています。

「7ステップ自己実現法」は4部構成になっています。
1.イントロダクション
  「7ステップ自己実現法」についての説明をしています。
2.方法論解説
  村井のナレーションにより、各ステップが詳しく解説されています。
3.実際のセッションシーン
  この方法論に基づいて被験者を対象に行われた自己実現ヒプノセラピーの映像です。
4.自己催眠による方法
  自己催眠で行う「7ステップ自己実現法」の方法を解説。

ただ今特別価格6,300円(税込)にて販売しています。このDVDを購入希望の方は こちら(info@holistic-work.com)までメールでお知らせ下さい。

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【3】ヒプノセラピーのDVD出演希望者を募集

村井啓一のヒプノセラピー方法論DVDシリーズ「7ステップ自己実現法」の続編 として今後、ヒプノセラピーの様々な方法を紹介するDVD制作を計画しています。 その中で実際のヒプノセラピー・セッションの内容を収録しますが、それに出ていた だけるセッションの被験者を募集しています。

DVDはヒプノセラピーの教育用として制作し、販売します。ご自分が持っている 悩みの解消や課題の究明等を行いたい方は是非ご応募ください。なお応募者には面接 を実施させていただきます。出演希望者は村井(murai@holistic-work.com)へご連絡 ください。

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【4】「一般社団法人日本臨床ヒプノセラピスト協会」設立

日本でのヒプノセラピーの普及・発展および優れたヒプノセラピストの育成、また、 ヒプノセラピーで救われる可能性のある悩める人たち全員がヒプノセラピーを施療の オプションとして普通に選択していただける社会環境を構築することを目的として、 「一般社団法人日本臨床ヒプノセラピスト協会」が設立されました。

当協会では医師等の医療従事者、心理療法家、民間のヒプノセラピスト等が互いに 協力し合いながら日本のヒプノセラピーの健全なる普及・発展を目指した活動を展開 してまいります。

当協会の理事は、石原 均(ヒプノセラピスト・石原クリニック院長・医学博士)、 川嶋 朗(ヒプノセラピスト・東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック 所長・医学博士)、萩原 優(ヒプノセラピスト・イーハトーヴクリニック院長・医学 博士)、宮崎ますみ(ヒプノセラピスト・日本ヒプノ赤ちゃん協会代表)、村井啓一 (ヒプノセラピスト・日本ホリスティックアカデミー代表)の5名です。監事はTRAD 税理士法人の粟野 彰啓代表税理士が、代表理事には村井が就任しました。

近日中にウェブを作成し、正式に会員の募集を開始いたします。

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【5】「アラスカの夏」(5)  (村井啓一)

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  ・これは村井がアラスカ大学大学院に留学していた1980年代の
   ある初夏にエスキモーのキャンプ地で過ごした体験を記したノン
   フィクションです。
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 ケリーはすでに毛皮と肉塊の両方に付いていた脂肪を削ぎ終えた。ボブが脂肪片の 詰まった樽を穴蔵へ運んでいった。この樽を永久凍土を掘ってつくった穴蔵式の貯蔵 庫に入れて置き、脂肪が自然発酵して油のしみでてくるのを待つ。この地面を掘った 穴蔵は冷蔵庫としても使われている。

   穴蔵は縦一メートル五十センチ、横二メートル、高さが一メートル五十ほどの広さ がある。コケ類で覆われた屋根には流木や廃品が積まれている。入口の木製のドアを 開けると一メートルくらい下に降りる階段が据えつけてあり、中へ入ると冷気が皮膚 に心地良い。私が持ってきた野菜類や肉類もここに貯蔵してある。

昔、白人との接触が始まる前にシソーリックに住んでいたエスキモーは、穴蔵を掘っ て居住としていた。今ではもう穴蔵住居に住むエスキモーはいないが、穴蔵は貯蔵庫 としていまでもこのシソーリックで数軒の家に残されている。

 ボブは運んで来た樽を穴蔵の棚にのせた。  「斑入りアザラシ一頭からとれる油の量はウグルック一頭からとれる量の五分の一 しかない。でも斑入りアザラシの脂肪の良い点は、抽出しやすくしかも保存しやすい ことだ。それに、かすかに白く透明に近いこの斑入りアザラシの油は、味にうるさい エスキモーのお気に入りのシール・オイルなんだ」

 穴蔵を出てケリーの所へ戻ってみると、ケリーは既に肉塊を解体していた。斑入り アザラシの肉はウグルックの捕れている間は余り食卓にはあがってこなく、専らエス キモー犬の食用となる。だが、レバーだけは別だ。斑入りアザラシのレバーはすべて の陸と海の動物のなかで最も美味な肉としてエスキモーに珍重されている。エスキモー はこれを色々な料理方法で食べる。煮る。フライにする。焼く。はたまた、雪の中に 二三週間埋めて凍らしたものを取り出して生のままかじる。等々。

 私は以前、食用油でさっと揚げたのをシール・オイルに浸けて食べたことがあった。 レバーにありがちな臭みがなく、噛むと舌の上に微かな甘汁がほろっとしみでてゆく。 旨い。なるほど、これならレバーの王様の称号を与えられるのも道理だ、と感心した ものだった。

 早速、このレバーを他の臓物、肉類と一緒に料理する。胃、心臓、腎臓、肩の肉、 脇腹の肉、それらすべてをぶつ切りにして大鍋の湯のなかに放りこんだ。少し遅れて から、内容物をきれいに洗いとった腸のぶつ切りがそれに加わる。レバーは胆汁を取 り去ってから同じ鍋に入れる。二十分もグツグツと煮込むともう出来上りだ。味付け など一切していない。流氷を溶かしてとった水をただ沸かしただけの湯だ。勿論、臓 物や肉類には塩さえふっていない。切りたてのまだ血のついているやつを、そのまま 煮込んだだけだ。

 食べ頃と見ると、鍋をストーブから下ろし、湯を浜辺の砂に流す。そして、まだ熱 いうちに中身を大皿に盛りつける。湯気のでている茶褐色の肉塊を手づかみでとり、 自分のナイフで食べる分だけ小皿にとる。小さく切って頬張る。唾液がジューッと音 をたてて出てくる。浜辺に据え付けてある長方形のテーブルには、塩、こしょう、そ れに有り難いことにはキッコーマン醤油の小瓶もある。

 ボブとケリーは小皿にマスタードを少し取っているが、ほとんど何も付けないで食 べている。私はマスタードと醤油を付ける。何か付けないと味が物足りないのだ。

 ボブが一つ一つの肉塊が何であるかを説明してくれた。腎臓、レバー、胃、・・・。 それぞれをナイフで切り取って食べていく。まだ臓物は柔らかくて食べやすいが、肉 はかなり固い。

 骨付きの肉など全く歯がたたない。スーパーやレストラン等の肉しか噛んだことの ない歯と顎では、この固さには到底太刀打ちできない。といっても吐き出すわけにも いかないので、なかばやけくそに百回噛むごとに飲み込んでいった。

 この皿には斑入りアザラシの前足の肉は載っていない。その部分の骨付きの肉片は 一週間から十日の間、外の干し台に吊るして寒風に曝す。それから、それを小さく切 り刻み、シール・オイルに浸けておくと八月頃にちょうど食べ頃となる。肉についた ままシール・オイルに浸された骨の骨髄部がやわらかな汁状となる。この骨髄部が絶 妙な味としてエスキモーに珍重されているナッチャールクと呼ばれるところだ。  

 干し台に吊るされた前足の肉を眺めながら、大皿から肉を選んでいく。レバーとか 心臓や腎臓といった比較的やわらかい臓物は売れ行きが良い。特にレバーはすぐに皿 からなくなってしまった。

 肉を食べ終わると、クラッカーにバターを山ほど塗ったのを食べる。みんなこれが 大好きだ。直径八センチもある丸いクラッカー全体に、バターを五ミリから一センチ 程の厚さに塗りつける。実は私もこれが好きなのだ。日本にいれば、それだけバター を塗りつけたクラッカーなど気持悪くて食欲をそそらないのだが、ここではそれが美 味しく感じる。環境が変われば食物の好みも変わってくるし、なによりもここの自然 条件がそれだけのバター摂取を体に当然のごとく要求してくるのだ。

 エスキモーは概して砂糖を多量に入れて飲む。ケリーはテーブル・スプーンに大盛り 四杯から五杯もいれて飲む。確かにシソーリックでコーヒーを飲むと砂糖を普段より多 めにいれたくなる。これも自然環境が人体に糖分の摂取を強要するからなのだろうか。

 「やあ、ヒューバート」
 ヒューバートとよばれた男は、エスキモーなまりの英語でボブに、
 「この風はどうしようもないな。猟に出ようにも、これじゃあ出たってとれっこないからな」
 と、言いながら私のほうを見る。
 「ヒューバートだ」
 ぶっきらぼうに右手を差し出して握手を求める。
 私も、
 「ケイイチです」
 自己紹介して、その手を握る。ごつごつとした分厚い手だ。力強い。

 ヒューバートは誰に勧められることもなく、テーブルに残された肉を自分のナイフで そぎながら食べ始め、
 「この三日間ずっと鱒ばっかり食べてたんだ。たまにはナッチィク(斑入りアザラシ) もいいもんだ」
 ボブが私に向かって、
 「鱒がとれる前は連日水鳥(ダック)のスープが続いたんだ。ケージも、もう少し早く くればダック・スープを味わえたのにな」
 それを聞いて、ヒューバートが、
 「おれたちとしてはダック・スープの攻勢からやっとこさ逃げ出せたんで喜んでたんだ が、ダック・スープがもう作れなくなってしまうと、たまに食べたい気持になるな」
 「鱒の味のほうがダック・スープよりいいだろう」
 と、ボブ。
 「うん。とれたての鱒の味にはかなわんな。あれはうまい」
 そして、ヒューバートはこう続けた。
 「鱒であろうが、ダックだろうが、やっぱりニキピアックがいちばんだ」

 ニキピアックとは『主となる肉』あるいは『基本となる肉』という意味のイヌピアック・ エスキモーの言葉だ。この言葉は伝統的なエスキモー食一般を指しており、これに対する 言葉として、ナルアグミタック(白人の食物)がある。ニキピアックとはすなわち、その 土地でとれる動植物をエスキモーの伝統的な方法で調理した食物のことだ。

 エスキモーの味は驚くほど繊細だ。かれらの舌は日本人には淡泊すぎる味を利きわける ことができる。概してかれらは香辛料の利いた料理を好まない。日本人における米のよう に、伝統的な主食には何かと味を加えたりしないでそのまま食べるのだろうが、かれらも 主食の肉を味付けなしで食べる。かれらの舌には主食である肉の味を利きわける感触が発 達しているのだ。

 それに何といっても、あの鯨の表皮とその下の脂身が三層となっている部分を薄く切り 取っただけのマクタックと呼ばれるエスキモーの大好物。初めてマクタックを食べたとき はまるで味が完全に抜け切って繊維質だけが残ったスルメの油づけを噛んでいるように思っ たものだ。

しかし、その味に慣れ親しみ、段々と味覚が発達してゆくと、マクタックの一 噛み一噛みから淡い滋味がにじみでてくるのを楽しめるようになる。しかし、ボブに言わ せると、エスキモーにとってマクタックの味はそんな淡いものでなく、もっと深く濃いも のだそうである。そう、味覚は確かに発達するのだ。

 鱒の料理の仕方も単純だ。これもとれたてのやつをただ煮る。何も手を加えない。そし て煮上がったのをそのまま食べる。エスキモーにとってはその味が最もうまいのだ。

私は醤油や塩などで魚本来の持つ味を誤魔化して食べる習慣が身についているので、 どうも何もつけないそのままの味はあっさりとしすぎている。しかし、これもみんなの真似をして、 何もつけないで食べているうちに段々と本来の味が分かるようになってくるのだろう。

 「猟にいかないの?」
 ヒューバートに訪ねた。
 肉をかじりながら、ヒューバートが答える。
 「勿論、行くさ。でも今日は風向きが悪い。北西から風が吹くとウグルック猟には良く ないんだな」
 「へー、どうして」
 「氷が良くないんだ。昔からそういうことになってる」
 と、言ったきり海を見ている。

 私がいぶかしがっているのを見て、ボブがコーヒー・カップで両手を温めながら、  「アザラシ猟にはアザラシが休めるような大きくて平坦な浮氷が必要なんだ。今の時期 水平線の彼方にはまだ浮氷がたくさん残っている。そしてその氷の群は風と海流の作用で 岸に近付いたり、沖に逃げたりしている。ところが海の方、つまり北西から風が吹くと氷 はチャクチ海の方へ向かって流れ出てしまうんだ。風が吹いてくる方向へ向かって氷が運 ばれていくというのは不思議な話だが、これはこの辺の海が浅い湾状になっていることと 潮の流れとが複雑にからみあって生じる現象なんだ。アザラシ猟にでかけるには、なるべ く陸から近いところに浮氷群が集まっていて欲しいのだよ。あまり遠いと小さなエンジン 付きボートでは危険だからね」

   そこから見ると海岸の近くには浮氷はほとんどなかった。遥か彼方、北方に見えるクルー センスターン岬の先端付近に、わずかに白いものが光っているぐらいだ。

 肉を食べ終えたヒューバートがコーヒーを注ぎながらこう言った。
 「こういう日には、ただ食べて、だべって、散歩するにかぎる。そうして、氷がやって くるのをじっと待つんだ」

 腕時計を見るともう夜の九時を回っている。だが、まだ空は明るい。チャクチ海の氷上 から吹きつける寒風のため、外に出ているときは厚手のセーターの上にパーカが必要な程 寒い。それでも、しばらく表に出ていると体が冷え切ってしまい、ボブとケリーのテント に入り込む。

 二人のテントは木枠を組んだ上にキャンバス地の布を張ったもので、ウォール・テント (壁テント)と呼ばれている。入口のある側面が将棋の駒形の五角形になっており、その 布壁の中程に開閉式の木製ドアーをこしらえている。

中に入ると、横が二メートル五十、奥行きが三メートル五十ほどの広さがある。戸口近くの 入って左手に薪式ストーブが備え付けてあり、トタン管の煙突が天井を突き抜けている。 しかし、熱が屋根のキャンバス布に伝わらないように、煙突の周囲にはブリキ板を填め込ん である。

 ストーブは二段になっており、上は普通のストーブとして、下は料理用オーブンとして 使えるように工夫されている。天気が良いと屋外ストーブを使って料理をし、外で食事を とるのだが、極端に寒い日や天気の悪い日にはテント内のこのストーブを使って煮炊きが 行われる。今日のように天気が良くても風が強い日などは、テントを出たり入ったりしな がらストーブのそばで一日過ごす。

 薪は海岸に漂着した流木を集めてくる。シソーリックから東北へ三十マイル位入って行 くと、スプルース(トウヒ)やバルサム・ポプラなどの樹木を見つけることは出来るが、 シソーリックは森林限界線の北にあり、海岸から内陸部の丘を見渡しても樹木と呼べるよ うなものは一本たりとも存在しない。そこら一面は低灌木類や地衣類に被われた湿ツンド ラの湿原地帯である。

 流木は巨大な獣の白骨のように、しらじらと海岸に晒されて散乱している。年によって 流木の多いときと少ないときがある。今年は過去十年のうちでも流木の数は多いほうだ。

一年前の八月末頃に、流木の大群がノームからコチブーに至るまでのスワード半島沿岸 全域と、北はポイントホープ辺りまでの海岸をうめつくした。この流木群がどこからきた ものかは誰もわからない。

この流木の中にはシソーリックやコチブー周辺の河川上流には 見られない種類のトウヒ類の大木も多く混じっており、土地の者たちはこれらの流木が南 のユーコン河の大洪水によってベーリング海に押し流され、潮流に乗って北方の沿岸に漂 着したか、あるいはシベリアの大森林からの大木が流れ着いたものかのどちらかだろうと 推測している。

 シソーリックの人々は昔から流木に頼って生きてきた。流木は犬ぞりやカヤックの骨組 みや、その他様々な生活道具を作るのに利用され、それに勿論、料理や暖をとるための燃 料としての役割も果たしてきた。

 現在でも流木はシソーリックの住民にとって大切な資源だ。近年は流木の中に、時たま 製材された板や柱などが混じっていることがある。また、アラスカ西部には生えていない 種類の松やモミ、それに樫などの木もどこからか流れ着いてくる。

 ボブのテントの近くに二か所、流木を寄せ集める置き場所がある。折にふれ、近くの浜 辺からボブとケリーが集めてきた流木の山だ。暇があればそこから適当な木を選びだし、 小さく割って薪を作っておく。

 白いスプルースの薪をボブがストーブにくべた。開いたストーブの投入口から熱気が吹 きよせてくる。長い間水に浸かったあとに乾燥した木はよく燃える。熱気が更に強く発散 する。

 戸口から入って右手に、布壁につけてテーブルが置いてある。横幅が一メートル、奥行 は五十センチほどのテーブルだ。それを壁に向かって囲い込むように背椅子が二つと丸木 を輪切りにした腰掛けが三つ置いてある。

 部屋の左奥つきにはベッドが据え付けてあり、その周囲をカーテンで囲っている。この カーテンはプライバシーを守る役目と蚊帳としての働きを兼ねている。ベッドと右奥つき の間には小さなテーブルがあり、その上にCBラジオの収まっている棚がある。さらに右奥 の隅は物置になっている。

 テントに入ってすぐ左側の壁には食器棚が据え付けてあり、鍋や釜の類が壁の木枠から 吊るしてある。足下には床板が敷きつめてあり、屋根にあたる部分には雨漏りを防ぐため 透明ビニールをキャンバスの上に張ってある。

 「ここでの生活も変わってきた。ここにすみだしてから三十五年になるが、十五年ほど 前からサーモン漁が商業的に行われるようになり、ここでの生活も大きく変わってきた。 サーモン漁によって現金収入が得られるようになったんだ。それからの生活は、それまで とはすっかり変わっていってしまった。良いか悪いかは分からんが、確かに言えることは、 若いエスキモーが昔のような生活を送ることはもうできなくなってしまったということだ」
 と、ボブが言った。
 ケリーはベッドに腰かけてCBラジオを聴いている。
 私はボブに質問した。
「サーモン漁の始まる前までは現金収入はなかったのですか」
 ボブはストーブとベッドの間においてある道具箱に座っている。

 「コチブーで何か仕事を見つけるか、猟でとった獲物を売れば手にはいった。でも仕事 はそう簡単にあったわけじゃないし、獲物もいつも余分にとれるわけじゃなかった。現金 が手に入ったとしても桁が違う。今では、僅か一ヶ月ほどのサーモン漁で、運がよければ 一年間暮らせるぐらいの現金を稼げるからね。今のエスキモーたちはその金でスノー・ゴー (スノーモービル)を買い、ガソリンを買い、スリー・フィーラー(三輪バイク)を買い、 ボートのエンジンをより強力なものに買い換え、白人の食料をコチブーのマーケットで買 うんだ」

 「昔の生活はどうだったんですか」
「もともと自給自足で暮らしていたエスキモーにとって現金は必要でなかった。欲しい 物があれば、それと同価値とみなされる毛皮やシール・オイルなどで物々交換をした。そ の為に近隣の村人が寄り集まって、シソーリックで毎年一度物々交換の市がたったものだ。 みんな色々な物を持って集まってきてお祭りのようなものだ。今はコチブーで毎年それを やっているけどね。みんな、手に入り難いコーヒーや砂糖などの白人の食料を求めたもの だ。自給自足では決して手に入らない物を欲しがったんだ。今ではコチブーのスーパーへ 行けば何でも揃っているからね。お金さえあれば猟にでなくとも好きな肉が買えるんだ。 エスキモーでも白人の食料に頼って暮らしている者が大勢いるようになった」

 「そういう白人の食料を買って暮らしているエスキモーでも、シール・オイルを食べて いればエスキモーの心を失っていないと見なされるのですか?」
「その通り。だからコチブーのような街に住むエスキモーは仕事の休みがとれればシソー リックに来て猟をしようとする、さっきの家族のようにね。エスキモーの食物とシール・ オイルを手に入れたいんだ。もし猟がうまくいかなかったり、猟にでる暇がとれなかった エスキモーたちは、他のエスキモーたちからシール・オイルを調達しようとするんだ」
「コチブーのスーパーでシール・オイルを売っているとか・・・」

「それはないね。シール・オイルはそんなに採れないし、自給自足に近い生活をしてい るエスキモーにしてみれば、シール・オイルは多ければ多いほど心強い。いくら夏の猟の 成果が良かったとしても、秋から冬にかけてカリブーやムースなどの陸の獲物を首尾良く 捕れるかどうかは誰もわからない。だから誰しも、なるべく多くのシール・オイルを蓄え ておきたいんだ。仮に、あり余るほどシール・オイルがとれたエスキモーがいたとしても 彼はまず親類や友達のエスキモーのなかでシール・オイルを欲しがっている者に分け与え る。どのハンターも猟がうまくいったとは限らないからね。運の悪かったハンターは何と かしてシール・オイルを手に入れたいと思っている」

(つづく)

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