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 2012/08/14 配信

日本ホリスティックアカデミー・メールマガジン No.18
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    「ヒプノの青い鳥---本来の自分を発見する癒しの旅へ」
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■トピックス

 【1】ヒプノの青い鳥--うつと脳刺激
 【2】ワイス博士の前世療法トレーニングのレポート(7月 in New York)
 【3】オフィス移転のご案内
 【4】フェイスブックを始めました
 【5】「アラスカの夏」(村井啓一)連載(6) 
 【6】メールマガジンの配信解除

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【1】ヒプノの青い鳥--うつと脳刺激

うつ病の最新治療がこの2月にNHKで取り上げられました。脳科学の進歩によって うつ病の脳内メカニズムが分かりはじめ、画期的な治療が米国で始められている のです。

うつ病は脳内の扁桃体がコントロール不能となって、不安や恐怖や悲しみなどが 止まらなくなった状態だと考えられています。近年の脳科学の研究によって、脳 内のDLPFC(背外側前頭前野)に扁桃体の暴走を抑える働きがあることが分ってき ました。

経頭蓋磁気刺激(TMS)は、磁気でDLPFCを刺激し、不安や悲しみの感情を抑える 装置です。NeuroStar社が造り上げたこの治療装置は、既に米国では400ヶ所以上 の医療機関に導入されています。DLPFCに磁気刺激を当てることによって、DLPFC が扁桃体に刺激をおくり、扁桃体を本来の正常な状態へ戻していくのです。

日本では横浜にある神奈川県立精神医療センター芹香病院で実験的に臨床治験が 行われていますが、安全性や有効性の確認までにはあと数年はかかるようです。 芹香病院では番組放送後に問い合わせの電話が殺到したため、今は電話の対応は されていないようです。

患者の頭に電極を埋め込み脳の働きを改善する脳深部刺激(DBS)という治療方法も 紹介されました。DLPFCと扁桃体の両方の働きを調整するという25野という部位が 脳内にあります。先端に電極がついた細い電線を脳に埋め込み、電気で25野を刺 激し不安や悲しみの感情を抑えこむ治療法です。この治療方法は75%の治癒率と のことですが、難点は、脳に電極が刺しっ放しになっていることと、胸に電源を 植え込まねばならないことです。

言葉の力で治す認知行動療法も注目されているとのこと。うつ病患者の扁桃体は 暴走し、不安や悲しみ等の否定的な感情がわきあがりやすくなっています。言葉 によってDLPFCが活性化し扁桃体にブレーキをかけることができるのです。

また、幸せな想い出をイメージすることによってどれほど扁桃体が冷静になれる かを試験的に試しておいて、少し辛くなったときなどに一番扁桃体が冷静になれ る想い出を意図してイメージすることによって、扁桃体を冷静に戻すことができ るのです。これなどはヒプノセラピストが長年やり続けてきたイメージワークに 他なりません。

脳科学の進歩によって、ヒプノセラピストが行ってきた認知行動療法(暗示療法) やイメージワークなどの有効性が証明されてきました。経頭蓋磁気刺激(TMS)は 治癒率が7割だと言います。磁気刺激によって一時的に効果が上がったとしても、 心の奥にうつの原因を抱え込んでいるとすれば、治療を止めるとうつは再燃する のです。

対処療法と同時にヒプノセラピーのような心の内部をクリアにする根源的な癒し の方法を併用するのが理想的なのかもしれません。

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【2】ワイス博士の前世療法トレーニングのレポート(7月 in New York)

7月23日から5日間、ニューヨークのオメガ・インスティチュートで開催された ブライアン・ワイス博士夫妻の前世療法プロフェッショナルトレーニングを受 講してきました。

私自身は今回が10年目の区切りとなる参加でした。ワイス博士夫妻の講習会は 年々人気が高まっており、今年は7月の講習も、10月に開催される同じ講習も、 かなり早い段階で満員となっていました。

例年だと120名ほどの定員で組まれる7月のこの講習も、キャンセル待ちの方達 に配慮して30名多めに受け入れて、総員150名のクラスとなりました。

世界中からワイス博士の前世療法を学ぼうとして集まった総勢150名のなか、日 本人の参加者は総勢23名(うちJHA関連20名)でした。これはお膝元のアメ リカ本国からの参加者に次いで多い人数でした。

日本からのメンバーは7月22日午後2時にニューヨークの空港で待ち合わせ、貸 し切りの観光バスでオメガに向かいました。会場のオメガ・インスティチュート はニューヨーク市内から西北へバスで3時間ほどの森の中にあります。ここは米 国内で最大規模の由緒あるスピリチュアル・スクールです。

夕方にオメガに到着しました。登録を済ませ、各自にキャビン(部屋)の鍵が 渡されます。部屋に荷物をおいて、ダイニングホールで夕食をとります。ダイ ニングホールの食事はすべてヴェジテリアンです。肉は全くでません。タンパ ク源としては豆や卵や豆腐がでます。

キャビンの部屋は一人部屋か二人部屋か、トイレとシャワーの個人使用か共同 使用かなどによって料金が変わってきます。キャビンの中は質素で、テレビや 冷蔵庫やクーラーはありません。当然ホテルの部屋にあるようなアメニティー グッズもありません。エコ(地球環境保護)を実践しているスクールです。

その夜8時からオリエンテーションが講習会場で行われましたが、ここではオメ ガの施設の案内や、講義の録音をしてはいけないとか、靴を脱いで入るとか、 トイレの場所といった類の注意事項やルールの説明がなされるだけで、講習の 内容についてのものではありません。もちろんワイス博士ご夫妻はこれには出 られません。

その晩は各自キャビンでぐっすりと休み、翌朝午前9時からの講習に備えます。 私はカフェでコーヒーを飲みながらインターネットでメールのチェックします。 オメガで唯一、カフェでは無線ラン(WiFi)が無料で使えますので、ほぼ毎晩 カフェでメールをチェックしました。

カフェには備え付けのパソコンも3台設置していますが、日本語対応になって いませんので、日本語のメールを日本語で見ることはできますが、日本語で メールを送ることはできません。カフェにはサンドイッチやポテトチップなど も販売しています。ターキー(七面鳥)のサンドイッチもありますが、これは オメガで食べれる唯一の肉類です。

23日の朝にダイニングホールで食事を済ませ、会場となるメインホールに入り ます。9時から講習がスタートしました。今回は人数が多いので個人での自己 紹介はなく、国や地域ごとに参加者を紹介をしていくやり方でした。

例年120名の定員で行う場合はひとりひとりが起立して自己紹介をしていまし た。例年ここでワイス博士がいつも言うセリフがあります。「ひとりが3分間 話したらどういうことになるのか、おわかりですよね」そう、120名×3分/1名 =360分=6時間となって一日の講習がそれで終わってしまいます。日本人は 皆さんドキドキで早く済ませたいと思っている人が多いので、短いのはありが たいのですが。今年の夏は自己紹介がなかったので皆さんほっとした(がっか りした?)のかもしれませんね。

講習はワイスさんの講義、参加者全員へのグループ誘導、前世療法の実演が メインです。奥様のキャロルの前世療法体験談とキャロルが行う前世療法も あります。参加者がペアになりお互いの持ち物を交換してその物のエネルギー から浮かぶイメージを伝えあう実習も行いいます。

日本人のメンバーは毎日、講習が終わり、夕食が済んだ8時頃から10時過ぎ まで、比較的広いキャビンに集まって村井のブリーフィングに参加しました。 その日にワイス博士が語ったことで大切なことや、エピソードなどの要点を 村井がかいつまんで語っていきます。

水曜日の午前にはビデオ鑑賞があります。これはワイス博士が「グッドモー ニング・アメリカ」という番組の取材として同番組の医科学担当の女性キャ スターに前世療法を行ったときの記録です。女性キャスターは深く催眠に入 り、幼少期に戻った後に、前世に入っていきます。前世から続く今世の家族 との関わりに気づいたり、自分の今が前世とつながっていることが分ったり して深い体験を味わったのです。

放送予定の前夜、マイアミからわざわざニューヨークを訪れ、ホテルの一室 で待機していたワイス博士に、番組のプロデューサーから電話が入りました。 それは番組の中で前世療法の内容を放送しないことになったというものでした。 女性キャスターのイメージを壊すことを心配した番組のプロデューサーが折角 のドキュメントをボツにしてしまったのです。

その代償としてワイス博士はその前世療法のフィルムを教育用途として使用 することを求め、それが叶ったのです。そのドキュメンタリーの内容はワイス 博士の著書『「前世」からのメッセージ 』(『魂の療法』を改題)に詳しく 書かれています。それを読んでビデオを見るとよくわかりますが、ワイス博士 は一言一句女性キャスターの語った内容をその通りに記述しています。

水曜の午前の講習を終えて、午後は自由練習です。日本人メンバーは全員で 前世退行の練習をしました。今まで前世体験が出来なった方も無事に初体験 できたようです。広い講堂のような会場ですが、所狭しと各国のメンバーが 寝転がってセッションをしています。英語やフランス語やスペイン語や・・・。 前世療法が世界中に広まっているのが実感されました。

木曜日は特別な日となりました。ワイス博士ご夫妻が私たち日本人メンバー との懇談の時間を作ってくれたのです。お昼休みの時間にカフェに集い、 一時間余りをワイス博士夫妻と楽しく過ごしました。お土産を渡したり、 ワイス博士へ質問をしたり、参加者全員が個別にワイス夫妻との記念写真 を撮ったり、自分の名前入りのサインをもらったり、ワイス博士ご夫妻の 温かい配慮に感謝感激です。

最終日の金曜は午前中のグループ誘導とデモンストレーションが終わると、 ワイス博士にサインを求める参加者の長蛇の列が出来ます。ワイスは博士は 一人ひとりとの会話に時間をかけ、著書に丁寧にサインをしていきます。

日本人メンバーは午後1時には貸切バスに乗ってオメガを後にしました。 3時間ちょっとの旅の後でニューヨーク市内に入りました。ヒルトンニュー ヨークの横にバスを停めて降車します。ヒルトンに滞在するメンバーが多 かったですが、他にもヒルトン周辺のホテルに宿泊する方もいました。 ほとんど全員がその夜の打上げ会に参加しました。何を食べたか?勿論、 和食です。ニューヨークの「寿司田」で楽しく歓談しました。

その次の朝に帰国する人もいるし、何日か観光してから帰国する方もいま した。それぞれのメンバーにとって有意義なオメガへの教育ツアーになった ことと思います。

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【3】オフィス移転のご案内

(株)日本ホリスティックアカデミー(JHA)、(株)ホリスティック ワーク(HW)、(社)日本臨床ヒプノセラピスト協会(JBCH)は、この 9月に五反田へ移転いたします。

広尾にオフィス(セッションルームとスクール)を開設して以来既に 10年を超えましたが、スクール事業の一層の強化を図るため、より広い 場所に移ることといたしました。

新しいオフィスはJR五反田駅東口から徒歩2-3分の至近距離にあります。 広尾のテラスハウスと違って、オフィスビルの3階部分を借り切る形に なります。スクールの教室が2つとセッションルーム、それに事務ス ペースで構成されるシンプルなオフィスです。

教室が2つありますので、ヒプノセラピー関連の講習は勿論のこと、 ヒプノ事業の経営者として知っておくべきITの知識や税務関連の知識 なども学べる多彩な講習を企画・開催していく計画です。

周辺の徒歩圏内にはビジネスホテルも多くあり、当オフィスの近くで 滞在していただくことが可能となります。また、遠方からのアクセス がより便利になります。品川駅から10分以内で、東京駅からは20分以 内で、羽田空港からも早ければ35分、遅くても55分程で五反田オフィ スに到着します。

内装工事と荷物の移動を8月中に済ませて、9月15日から新オフィスを オープンする予定です。

新住所(9月15日から):
〒141-0022 東京都品川区東五反田2-7-14 五反田栗の木ビル3F
新電話番号(9月15日から):03-6721-7612
新FAX番号(9月15日から):03-6721-7632

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【4】フェイスブックを始めました

8月から村井個人のフェイスブックを始めました。以前からページだけ は試作して持ってはいたのですが、開店休業状態でした。今回ワイス博士 のオメガでのトレーニングに参加した方たちの多くがフェイスブックを 利用していたので、遅蒔きながら真剣に向き合うことにした次第です。

まだ不慣れなもので情報量は少ないですが、おいおいと充実させていき たいと思います。よろしければたまに見てください。

フェイスブックのURLは、(http://www.facebook.com/keiichi.murai.001/)です。

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【5】「アラスカの夏」(6)  (村井啓一)

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  ・これは村井がアラスカ大学大学院に留学していた1980年代の
   ある初夏にエスキモーのキャンプ地で過ごした体験を記したノン
   フィクションです。
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 風は少しおさまってきたが、気温は下がっている。足下にひんやりと した空気が漂っている。ケリーはCBラジオで交信している。イヌピアッ ク語で喋っているので話の内容はわからないが、時折雑音に混じって、 エスキモー特有の『イヒヒヒヒヒッ』というけたたましい笑い声が伝わっ てくる。

   何故シソーリックに住むようになったかをボブに尋ねた。ボブは薪を 一本くべ、ストーブのうえのコーヒー・ポットを下ろすと、ゆっくりと 思い起こすように次のような話をしてくれた。

ボブ・ユールは五十七歳になる。一九四五年、高校を卒業する半年前 に軍隊に志願したが、すぐに戦争は終わってしまう。ボブは原爆が使わ れたことに大きなショックを受けた。正義のアメリカ、そのアメリカを 支えていたキリスト教精神に対して自分の持っていた全ての価値観が覆 されてしまった。高校に戻る気は消え失せてしまい、その日その日を大 切に生きることしか頭になかった。

 無性にどこか遠くへ行きたいと願っていたボブは、故郷のカリフォル ニアから遠く離れたアラスカのコチブーに配属された。コチブーを基点 としてアラスカ内の村や部落を巡り歩き、ソ連のスパイが潜伏していな いかを住民たちから情報を得ながら監視して回るのがボブの小隊の任務 だった。その小隊でボブは食糧調達の役割を受け持っていた。

 ある夏の夜、ボブの小隊はユーコン河の河口近くで野営をしていた。 全員が寝静まった頃に河の方から奇妙な音が聞こえてきた。ボブは目を 覚まし、聞き耳をたてていると、また同じ音がした。ボブは起き上がり、 河に近付いて行った。すると、以前にも増して大きなブハーッという音 が鳴り響いた。ようやく河岸まできて付近を見渡したが、わずかに暮れ かかった真夜中の空の色を映しているユーコン河には何も見えなかった。 ボブは暫くの間岸辺にたたずんで、じっと辺りに注意を払っていた。

 すると突然、ブワーッという大音響を伴って、河の水が噴水のように 夕焼けの空に舞い上がった。わずか十数メートル離れた河のなかにベルー ガ(白くじら)がいたのだ。

 白くじらは出産のためにかなり内陸の浅瀬にまで河を遡ってくること がある。生まれて初めて見る白くじらだった。白くじらの息吹は印象的 であると同時に神秘的だった。ボブは何度も何度もその息吹を繰り返し 聴き、そして見とれていた。ボブは野生動物の生命力のシンボルを見、 自然界の生命のリズムを聴く思いがした。

 一九四八年の五月に、ボブはイヌピアック・エスキモーの女性カミー リャック(ケリー)と結婚した。そして、数ヵ月後にボブは除隊した。 カリフォルニアに戻る気持は毛頭なかった。この二年間暮らした北極圏 の陸と海の生活から、ボブは新しい価値を見つけ始めていた。ここでの ケリーとの暮らしによって何かがつかめる、という予感がしたのだ。

 その夏二人は、シソーリックに住むケリーの父親、カルーチャック (ホイッティアー・ウイリアムズ)の所へ移った。そして二人はホイッ ティアーと共にシソーリック北部、クルーセンスターン岬のシーリング ポイント(アザラシ猟拠点地)にアザラシを求めてキャンプを設営した。 そこにはすでに十家族ほどのエスキモーが移り住んでいた。

 軍隊生活の経験から、ボブはハンティングの腕には自信を持っていた。 だが、すぐにボブは自分の技量が全く自慢するに足らないものであること を、他のエスキモー猟師によって見せつけられた。ハンティングの腕前は ただ単に射撃のうまさにかかっているのではない。ハンティングをうまく 成功させるには、獲物の習性や弱点を知り、また地形や自然条件などを 把握しておかなければならない。ボブはそのことを痛切に感じた。

 ボブはまずアザラシ猟を覚えることから始めようとした。だが、経験を つんだ年配のエスキモー・ハンターたちは、誰もボブの教師になろうとは しなかった。誰もがボブよりもアザラシ猟について詳しく知っていたが、 ボブに直接教えようとする者はいなかった。

 といっても、エスキモー・ハンターたちはボブを除け者にしているわけ ではなかった。それがエスキモー流のやり方なのだ。ボブもじきにエスキ モーたちのやり方が分かってきた。かれらは自分たちの自慢にならないよ う、またボブの面子をつぶさないよう、さり気ないチャンスをつかまえて はボブにもわかるように自分たちのやり方を見せていった。

 もしもボブの方から質問をすると、エスキモー・ハンターたちはいつで もボブが納得できる解決策が見つかるようにしてくれた。だが、かれらの 答えは、知っている者が知らない者に与える一方的なものではなかった。 かれらはボブに、ヒントを与えたり、提言をしたり、遠回しに自分たちの 所見を述べていったが、けっして自分たちの考えを押しつけようとはしな かった。かれらの意見を採るかどうかはボブに委ねられていた。

 これがエスキモー流の教育だった。エスキモーは教えを受ける者に対し て、頭ごなしに教えることをしない。相手に望まれれば思う所を述べるが、 自分の意見や方針を相手に強要しないのだ。

 ボブはそのようにして、エスキモー・ハンターからアザラシ猟を学んで いった。そしてアザラシ猟が単なるハンティングではない、ということも 分かってきた。アザラシ猟はエスキモーが自身のアイデンティティを保つ ための、大切な伝統的、精神文化的な意味合いを持つ活動であることが分 かってきたのだ。

 そして、シール・オイルがエスキモー社会に占める役割が単なる食用油 や灯火油でなく、それ以上のものであることも知った。ボブは自分自身の 経験からも、シール・オイルを食べる白人はエスキモーに同化したと見な され、逆にシール・オイルを使わなくなったエスキモーは、白人化した、 即ちエスキモーであることを止めたものと見なされる、ということを確か めた。そして、ボブはこの地域の海に生息している海獣の特徴や習性も、 段々と覚えていった。

 ある日、ボブは浜辺でソリを引きながら流木を集めていた。すると同じ ようにソリを引いて流木を集めている、年老いたエスキモーに出会った。 ボブの方から挨拶をしたら、老人が一息しようと声をかけてきた。老人の 名はジョージ・ワシントンと言った。ジョージは温かい飲物を入れようと 提案した。遠出をする予定ではなかったので、あいにくとコーヒーも紅茶 も持ってきていないとボブが答えた。しかし、ジョージは構わず細い流木 を折って火をおこしにかかった。そして、ポットの代わりにコーヒーの空 き缶に流氷を詰めて火にかけた。

 湯を沸かしている間に、どうやってウグルック(アゴヒゲ・アザラシ) に忍びよるかをジョージが話しだした。「ウグルックはそう簡単にお目に かかれるもんじゃない。だから幸運にもウグルックを見つけた猟師はその チャンスを逃さないようにしないとダメだ」

 ジョージはそう言うと、ウグルックの身振りを真似ながら、体をくねら せて進んでいくやり方を示し、そしてウグルック猟について語りだした。

 ボブは今までの経験から、氷の上に休んでいるウグルックに近付くこと がいかに難しいかが身にしみて分かっていた。ウグルックの目は余り良く ないが、聴覚は鋭く発達しており、非常に用心深い。広く平坦で周囲に障 壁のない見晴らしの利く浮氷で、しかも危急の際にすぐに飛び込んで逃げ 出せる穴がすぐ側にあるような氷上でないと、ウグルックは姿を現して休 もうとしないのだ。

 そのウグルックを捕るには、まずもってそのような氷を発見しなければ ならない。もしも運よくそういった浮氷を見つけ、たまたまその上にウグ ルックが寝そべっていれば、ハンターたちはカヤックを浮氷に近付けて、 そっと浮氷に乗り移る。

 ハンターたちはみんな白いパーカを着て、アザラシの毛皮製のズボンと ブーツをはいている。ジョージはウグルックの動作を真似ながら、体をく ねって、そっとウグルックに近付く方法をボブに示した。そのようにして、 昔の熟練したハンターならウグルックのすぐ近く、二メートル程にまで接 近し、もりを打って仕留めることができた。

   ボブはそれまで、エスキモー・ハンターが実際にウグルックに近付く姿 を見たことがなかった。勿論、ボブも他のエスキモー・ハンターたちも皆 ライフルを持っていたので、それほどまでに近づく必要はなかった。でも、 ボブの場合は大抵、ライフルの射程距離内に近付くまでに、ウグルックに 気付かれ穴の中に逃げられてしまうのだった。

 ジョージはウグルック猟について話を続けた。ウグルックは巨大だが、 的は小さい。だから近付けば近付くほど射止める率は高い。だが近付き過 ぎるとウグルックに気付かれ、鋭い爪を利かせて驚くほど敏速に海中に飛 び込んでしまう。

 かと言って近付かなければウグルックの急所に弾を撃ちこめない。一発 で急所を撃たなければ、たとえその弾で五秒後にウグルックが死んだとし ても、ウグルックの体はすでに海中に沈んでおり回収は不可能だ。急所に 当て、その場から一歩たりとも動かさないこと。それが猟のコツだ。

 しかし、ウグルックは巨大な肉体を持っている。大きいのになると体重 が四百キロ以上にも成長し、その皮下脂肪の厚みは十二センチほどにも達 する。そんな巨獣を一発の銃弾で倒すのはまず無理だ。心臓を狙っても、 脂肪や筋肉の厚みで弾は心臓にまで達しない。また、脳に弾が的中すれば、 ウグルックは反射的にもがきながら、穴から海中へ突入して沈んでしまう。

 だから熟練のエスキモー・ハンターはウグルックの脊髄か、肩と前足の 付け根を狙う。その部分に当たってもウグルックは死なないが、その一撃 によってウグルックの前足の神経がまひしてしまい、その場から少しも動 けなくなるのだ。ウグルックの後足には爪がなく水かき状になっているの で、前足の尖った爪が使えなければ動けないのだ。そうなればそのウグルッ クは仕留めたも同然だ。

 また、ウグルックが何頭か同じ氷の上に休んでいるときは、いつも一頭 を見張り役にたてる。ウグルックの習性として、この見張りが警戒信号を 発しない限りは何が起ころうとも他のウグルックは逃げださない。だから、 この見張り役のウグルックを仕留めることができれば、そこにいるウグルッ クを全頭捕ることも可能なのだ。

 ジョージはそのように語ると、コーヒーを取りに自分のソリへいった。 湯はもうさっきから沸きたっていた。ソリから戻ると、ジョージは、手に コップを一つ下げたまま、「コーヒーも紅茶も持ってきていなかった」と 言った。

 ボブも自分のコップを取りに行き、空の食料袋に僅かばかりの砂糖が 残っているのを見つけて、それを取り出した。ジョージがボブに最初の 一杯を注ぎながらこう言った。

 「素晴らしいじゃないかね。コップとお湯と砂糖で温かくて美味しい 飲物がいただける。」

 この様にしてボブはエスキモーの猟を学び、かれらの哲学を身につけて いった。

(つづく)

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