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 2013/12/03 配信

日本ホリスティックアカデミー・メールマガジン No.25

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「ヒプノの青い鳥---本来の自分を発見する癒しの旅へ」

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■トピックス

 【1】ワイス博士の前世療法プロトレーニング(2014年7月in New York)
 【2】講演会「前世療法の歴史とエドガー・ケイシー」を2014年4月26日に福岡で開催
 【3】『悲嘆療法』書籍化プロジェクト - 悲嘆療法の事例募集
 【4】「アラスカの夏」(13) (村井啓一) 
 【5】メールマガジンの配信解除  

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【1】ワイス博士の前世療法プロトレーニング(2014年7月 in New York)

ブライアン・ワイス博士の「前世療法プロフェッショナルトレーニングコース」が 2014年7月21日(月)~25日(金)の5日間で開催されます。この講習を主催するオメガ・インスティチュート(ニューヨークにあるスピリチュアル系のスクール)の ウェブから申し込めるようになっています。興味のある方は早めにお申し込み下さい。 この講習の申し込みページのURLは下記のとおりです。
(https://www.eomega.org/omega/register/7535)

なお、ワイス博士からのメールで、7月の講習の参加希望者が例年よりも多く、 11月下旬の段階で残り50席ほどになっていると教えていただきました。参加を 迷われている方は一旦申し込んでおかれて後日決断されることをお勧めします。 キャンセルをした場合は開催日45日前までのキャンセルであれば手数料のみが 引かれて受講料は返金されます。また45日未満でのキャンセルの場合は受講料 を次回の講習に充てることができます。来年7月には当アカデミー代表の村井も参加します。例年日本から当アカデミーの 受講生をはじめ10~20名程度の日本人が参加しています。村井は十年以上 ほぼ毎年この講習に参加していますので、何かわからないことがあればご質問 ください。例年ニューヨークのJFK国際空港からオメガまでと帰りのオメガからニューヨーク 市内までのチャーターバスの手配を村井がしています。日本からの参加者はこれを 利用してもらえますので、日本人でまとまってバスでオメガに行くことができます。 英語の苦手な方でも安心して参加して頂けます。講座の通訳はありませんが、毎晩、日本人メンバーで集まってその日一日の 振り返りを行います。村井がその日のワイス博士の講習の要点をブリーフィング しますので、大切な内容を逃すこともありません。英語が苦手だから・・・という方 にも楽しく参加して頂けます。また、ワイス博士ご夫妻と日本人受講者との歓談の場に出ていただけますので、 ワイス博士と対話をしたり、2ショット写真やサインをもらうこともできます。当アカデミーでツアーを組むことはしておりませんので、原則個人参加としてオメガに 申し込んで頂きます。ただ、どうしても申し込みたいのに申し込むのが難しくて申し 込めないでいる場合は村井(murai@holistic-work.com) までメールでご相談ください。

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【2】講演会「前世療法の歴史とエドガー・ケイシー」を2014年4月26日に福岡で開催

2013年9月に東京で開催し大好評を得た講演会の内容を更にアップグレードしてお送りします。

*****同講演会の地方開催第一弾として、福岡の「和のやすらぎ枝」の大塚朋江代表が主催を引き受けて下さり、福岡での開催が実現することとなりました。今回は2014年4月26日(土)午後1時30分から福岡の「サンレイクかすや」で講演会「前世療法の歴史とエドガー・ケイシー」を開催いたします。内容は、NPO法人日本エドガー・ケイシーセンター代表理事の光田秀さんと当アカ デミーの村井啓一代表、および日本ヒプノ赤ちゃん協会代表の宮崎ますみさんの 3名によるそれぞれ1時間の講演と3名による座談会・質疑応答となります。*****講演会 『前世療法の歴史とエドガー・ケイシー』日時:2014 年4月26日(土)13:30(開場)~18:00場所:サンレイクかすや 多目的室講演者: 
 ○村井 啓一 (一般社団法人日本臨床ヒプノセラピスト協会代表理事)
 ○光田 秀   (NPO法人日本エドガー・ケイシーセンター代表理事)
 ○宮崎ますみ (日本ヒプノ赤ちゃん協会代表理事)
13:30 開場14:00~15:00 講演1 「前世退行から前世療法へ-エドガー・ケイシーの貢献」
               村井 啓一
15:00~15:10 休憩

15:10~16:10 講演2 「エドガー・ケイシーの前世療法(ライフリーディング)」
               光田 秀
16:10~16:20 休憩

16:20~17:20 講演3 「スピリチュアルな女性の癒しとエドガー・ケイシー」
               宮崎ますみ
17:20~17:30 休憩

17:30~18:00 座談会&質疑応答*****
参加費:4,000円*****<お申し込み方法>○ホームページからのお申し込み
  和のやすらぎ枝のホームページ(http://www.wanoyasuragi-eda.jp/)に出来る 『前世療法の歴史とエドガー・ケイシー』のボタンをクリックすると参加お申し込みフォームが出てきますので、必要事項を記入してお申し込み下さい。
  (12月7日頃からボタンを使ったお申し込みが可能となります。)○E-mailでのお申し込み  下記の必須事項をご記入のうえ(wanoyasuragi-eda@wine.plala.or.jp)までメールで お申込みください。
 *お申込みに必須の記入事項
  1.名前(漢字とフリガナ)
  2.住所
  3.電話番号 
  4.メールアドレス<振込み口座のご案内>
  お申し込みをお受けしますと、折り返し仮受付メールで参加費の振込口座をお知らせしますので、期限までにお支払いください。参加費の入金が確認できましたら参加確定のメールをお送りいたします。チケットの発行はいたしませんので、当日に会場へそのままお越し頂き、受付の参加者リストでお名前を確認のうえ入場して下さい。 *お申し込みのお名前と振込人のお名前が一致するようにお願いいたします。<会場&アクセス方法>
 会場:サンレイクかすや 多目的室
 住所:福岡県糟屋郡粕屋町駕与丁1丁目6 - 1
 電話:0 9 2 - 9 3 1 - 3 3 0 9
 HP:http://www.town.kasuya.fukuoka.jp/chiiki/shisetsu/bunka/sunlake/ ●JRをご利用の場合
 ・福北ゆたか線 博多駅→長者原駅 約9分
 ・香椎線 香椎駅→長者原駅 約15分 長者原駅より徒歩7分
 ●西鉄バスをご利用の場合
 ・天神より篠栗行き(31番)、日の浦口行き(310番)
  長者原下車 徒歩10分
 ・天神より粕屋町役場行き(31番)
  粕屋町役場下車 徒歩1分
 ●お車をご利用の場合
 ・九州自動車道 福岡インターチェンジから約10分
 ・福岡空港より約15分*****<エドガー・ケイシー(Edgar Cayce: 1877 ~ 1945)について>20 世紀前半にアメリカで活躍した霊的哲人エドガー・ケイシーは目覚めている時は 写真業を営む敬虔なクリスチャンでした。だが、催眠状態に入ると、ケイシーは超人 的な能力を発揮し、さまざまな難病に対して診断と治療法を与えること(フィジカル リーディング)をしたり、魂の記録庫( アカシックレコード) の中にある、依頼者の前世・過去世の読み解き( ライフリーディング)を行う、霊能力者に変身しました。エドガー・ケイシーはその生涯を通じて、科学的な唯物思想が社会・文化を支配している今日にあって、人間の本性が永遠不滅の高貴な霊的存在であることを、ドグマや教義としてではなく、具体的かつ実用的な仕方で力強く証明しました。ケイシーは、一面識もない遠方の人であっても、その名前と所在地さえ与えられれば、医学的に正確な診断を下し、時代を超越した治療法によって人々を救いました。彼の残した治療体系はケイシー療法として研究者らによってまとめられ、今日でも様々な疾病の治療に役立てられています。またケイシーのライフリーディングに触発された多くのヒプノセラピストたちが過去世 退行を実験的に行いました。その結果、癒しの方法論として過去世退行(前世退行)が普及していき、その方法論がより洗練された過去世退行療法(前世療法)として磨きあげられていきました。*************************************************************************
<前世療法について>前世療法は19世紀のヨーロッパで行われていた退行催眠から始まりました。当時の 施療家たちは今生の過去に起因する苦悩を持つ方が、その原因を思い出すことに よって楽になったり、苦しみのもとを変えたり、消したりすることで治療が完結すると 考えました。その退行催眠中に思いもかけず前世に入ってしまうケースが起こったのです。不思議な前世回帰の事例を経験するなかで、困惑した施療家やこの現象に興味を持った好事家が前世退行の実験を試みたのです。様々な前世退行実験が重ねられるうちに、人は前世を語ることができるということと、生まれ変わりの思想に立脚した前世退行によって、身体が癒され、心が楽になる、という現象が起きることが徐々に分かってくるのです。そして前世退行は前世療法 として進化を遂げました。また20世紀前半に、エドガー・ケイシーが催眠状態で依頼者の前世を読み解くこと を始めました。敬虔なクリスチャンであったケイシーは研究と考察の末、生まれ変わりの概念はクリスチャンの信仰を危うくするものではなく、むしろ信仰を高め完成するものであることを確信したのです。清廉潔白な透視能力者として人々から認められていたケイシーが行った前世読解 (ライフリーディング)によって催眠下の前世退行が世間一般に知られることとなり、多くの催眠療法家たちが前世退行を志す起爆剤となったのです。

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【3】『悲嘆療法』書籍化プロジェクト - 悲嘆療法の事例募集

ヒプノセラピーのなかで行う様々な癒しの方法論のなかでも悲嘆療法はとりわけ 異色の技法といえるかもしれません。

愛する存在を失った悲嘆の感情はなかなか消え去りません。愛する存在を失った 方にとっては故人はずっと胸のなかで生きつづけているのです。胸のなかに生き つづけているのですがその存在とのコミュニケーションができないでいるのです。その存在と向き合ってコミュニケーションが出来るとしたら・・・。思いの丈をぶつけることができるとしたら・・・。故人が語りかけてくれたとしたら・・・。その「・・・したら・・・」を叶えてくれるのがこの悲嘆療法なのです。そこには未完の コミュニケーションの完結が待っています。悲嘆療法は未完のコミュニケーションで苦しんでいる人に寄り添い、コミュニケー ションの完結を促す方法です。悲嘆療法の方法論とその現代的意義、またその 活用法としての事例紹介を掲載した書籍を計画しています。その悲嘆療法のメカニズムを学び、実践で用いているヒプノセラピストの皆さんの 「悲嘆療法」の事例を募集しています。多くの方に読んでもらいたいと思える悲嘆療法の事例をお持ちのヒプノセラピストの 方は村井にまでメール(murai@holistic-work.com)でお知らせください。メールを 頂いた方には折り返しご案内をお送りします。

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【4】「アラスカの夏」(13) (村井啓一) 

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  ・これは村井がアラスカ大学大学院に留学していた1980年代の
   ある初夏にエスキモーのキャンプ地で過ごした体験を記したノン
   フィクションです。
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二日後、エルマーのキャンプに遊びに行っていたマーロンからCBラジオで連絡 が入った。今からエルマーとマーロンが一緒にウグルック猟に出掛けるので私に 知らせてくれたのだ。

 ケリーが、「カイー、あんたの防寒服じゃもたないから、これを持っていきなさい」 と言って、ハンノキの樹皮でえんじ色に染めあげた真冬用のエスキモー・パーカと 防水性オーバー・ズボンを出してきた。エスキモー・パーカはボタンもチャックもない ずん胴のフード付きのワンピース式になっており、頭から被ると顔の表面だけが 露出する。ためしにエスキモー・パーカを着てみたが、ずしりと重い。そして温かい。 フードについた狼の毛の襟(ラフ)が顔に吹きつける風を和らげてくれる。私の 着ているジーパンやセーターなどもシール・オイルの匂いが染みついていたが、 このパーカはとりわけシール・オイルの匂いが強い。斑入りアザラシの毛皮で作っ てあるのでアザラシ油の匂いがするのは当然なのだが、この匂いをかいでこの パーカを着ているとまるで自分がエスキモーになったような錯覚に陥る。 ボブが新しい手袋を二組出してきた。一組は私が使い、もう一組は誰であっても 手袋が必要な者がいれば使わせるように、ということだ。昼食は二日前に初めて シソーリックで捕れたウグルックの肉と脂肪と臓物だった。その年の初めてのウグ ルックを仕留めた幸運なエスキモー・ハンターは、近在の者にそのおすそ分けを しなければならない。分配が済んでみると、そのハンターの手元にはほとんど 獲物は残らない。しかし、そうする事が土地の習わしとなっている。初物を皆で 味わい、そして食料の乏しい同胞がいれば助けようということだ。 ウグルックを手づかみで食べながら、私は陸と海の光景を眺めた。枯れ草色の 野原のあちこちで、太陽を照り返すように黄色い花が咲いている。黄色に輝く アークティック・ポピーの花がスプーンの先のような花弁を開き始めたのだ。 昼食を食べている野外テーブルのすぐ近くにもアークティック・ポピーが咲いている。 海には昨日までの流氷が見えなくなっている。 ただ、一つだけダーク・ブルーの光沢をした浮氷が座礁しており、風と潮の 浸食を受けている。しかし、そこ以外の海は平穏そのものだ。遼か遠方の 水平線上には氷群の蜃気楼が浮かび、その上空にはぬけるような青空が 広がっている。そして、その広がりは何ものにも遮られることなく内陸部の丘 の彼方へと連なっている。その丘の手前の潟にはついさっきまでウイッスリング・ スワン(鳴き白鳥)が羽を休めていた。 私は必死で肉と脂肪を食べている。氷の海で何時間も留まることになるのだ。 食べておかねばならない。胃袋に詰め込めるだけ詰め込んでエネルギーを 蓄えるのだ。 五センチ角のウグルックの脂肪身を皿にとり、ナイフで食べやすい大きさに切り とって次々と口に運んでいった。脂肪身を噛むと油がジューと音をたてて口一杯 に拡がる。少しマスタードをつけて食べる。 小腸を輪切りにしたのは、ちょっとイカの煮物を思わせる味と形をしている。 しかし、こいつはかなり固い。脊椎にくい込んだ肉を指でむしって食べる。生の ウグルックをただ湯で煮ただけのものだが、実に旨い。 マスタード、シール・オイル、しょう油、塩、コショー、ケチャップなどで試し ながら味わっていく。肉も臓物もいいが、やはり脂肪に勝るエネルギー源はない。 氷の海で体を保温するにはこれが一番なのだ。 昼食が済み一休みしてから、ボブがスリー・フィーラーでエルマーのキャンプに まで連れていってくれた。エルマーのボートにエルマーとその長男の十六歳に なるエルマー・ジュニアとマーロン、そして私の計四人が乗り込んだ。
 「アラパー。カイー?」 とエルマーが訊ねる。
 『アラパー』とはイヌピアック・エスキモーの言葉で『寒い』ということだ。私は ケリーから借りたエスキモー・パーカを見せて、寒くなればこれを着るので心配 しないでくれと返事した。いよいよ出発だ。 ボートはエンジンを全速にして沖へ向かって進んでいった。昨日まで海岸近く まで押し寄せていた浮氷が全く消えてしまった平穏な海だ。その海洋を十分、 十五分、二十分と全速で進んでいくがまだ浮氷の海に届かない。しかし、沖へ 向かっていくにつれて、波は少しずつ高くなっていく。もう陸が遠くに影のように しか見えない。 海の色は段々と濃くなっていく。空には雲が少し流れてきたが、まだ青空 には日の光が満ち溢れている。エンジンの音がボートの後方へ流されていく。 時折チャクチ海の細かい波しぶきがあがり、額や頬を濡らす。太陽は異様に 大きく水平線の上に浮かんでいるが、直視してもそれほどまぶしさは感じない。 三十分ほどたって、ようやく浮氷がちらほらと漂っている海上にでた。エルマー はエンジン操作をしている息子に速度を落とすように指図し、船首に立ち上 がった。エルマーが進路を手で示していく。浮氷が海面に露出している部分は 全体の六分の一しかない。よく前方を注意して進まなければ、ボートを浮氷に ぶつけてしまうのだ。 前進するにつれて浮氷の数が増えてゆく。そして浮氷の数が多くなるにつれ 海面が穏やかになってくる。ボートの徐々にスピードを落とし、今は低速で狭い 海路を捜しながらゆっくりと進んでいる。ここはしんだように静まり返った氷の 海だ。氷によって外部からの波や潮流が遮られ、海は完全にないでいる。 海面はシルクのサテンのように滑らかな光沢を放っている。そして、その 海から様々な色、形の浮氷が突きでている。褐色のもの、墨を流したような もの、澄んだグリーンに淡いベージュの混ざったもの、等々が思い思いの姿で 競い合っている。 風はほとんどなかった。この神秘的な氷と海の世界にウグルックが生息して いるのだ。いよいよ猟が始まろうとしていた。エルマーが私に向かって、氷の 上か海面に黒っぽい灰色の丸い形を見つけたらすぐに声をあげて知らせる ように指示した。 ジグソーパズルのように密集した氷の谷間を低速で蛇行しながら進んでいく。 今はもう風の音も波の音もまったく聞こえない。ただ、ゆるやかなエンジン音 だけがここの静けさを破っている。二三十分の間、全員が無言のまま氷の海を 注視していた。 突然、エルマー・ジュニアが叫んだ、
 「左!」
すぐさまエルマーとマーロンがライフルを左に向けた。しかし、すぐに銃口を 下へおろすと、エルマーが言った。
 「斑入りアザラシだ」
左前方の海面に小さなアザラシの丸い頭が一つ突き出ていた。ボートが近付く につれ、アザラシの後頭部が鮮明に見えて来る。ないだ海にゆるく波を立て ながら泳いでいる。三十メートルほどに接近するとサッと頭を沈めた。 ウグルックの頭の大きさは斑入りアザラシの二倍以上ある。だが、小さな氷が 散在しているこの海上でウグルックの頭を見分けるのは至難の技だ。しかも 遠くの黒っぽい物体がウグルックかどうかを一瞬にして見極めるには長年の 経験が必要だ。 エルマーが息子に、
 「それでいいんだぞ。間違ってもいいから見つけたと思ったらどんどん言え」
と励ました。我々は何度も小さな氷片や斑入りアザラシをウグルックと見間違え ながら、どんどんと群氷の中心部へ入っていった。 しばらくたって双眼鏡を覗いていたマーロンが黙って手で右前方を指し、エル マーに双眼鏡を手渡した。右前方の広大な浮氷の上にウグルックが一頭寝そ べっているのだ。エルマーはウグルックと確認すると、すぐ息子に全速で進み 右前方の浮氷につけるよう指図した。そして三十秒とたたないうちにボートを 氷に着け、エルマーとマーロンは氷上に乗り移っていった。 二人は膝を屈めてウグルックに接近していく。私とエルマー・ジュニアはボート に残って成り行きを見守っている。氷の亀裂などで姿と隠しながら着実に進み、 ウグルックから百五十メートルほどの地点にまで近付いて行った。 エルマーとマーロンはライフルを構えた。だが、なかなか発射しない。じっと 構えたまま動かないでチャンスを待っている。ウグルックは頭部をこちらに 向けた恰好で寝そべっているので、二人は狙い場所を定めることが出来ない のだ。   エルマーがこちらを振り向くと、口に手を当てて『音を立てろ!』と怒鳴り、 すぐまたライフルの望遠スコープを覗き込んで狙いをつけた。エルマー・ ジュニアと私が棒でボートの側板を叩いた。十秒ほど叩き続けたが、音が ウグルックまで届かないのか、ウグルックは微動だにしない。そのとき、 エルマーが『ピュー、ピュー』と指笛を二度鳴らした。すると一瞬遅れて、寝そ べっていたウグルックがゆっくりと首を起こして辺りを見渡した瞬間、遠くで ダダーンという銃声が鳴り響いた。ほとんど同時にウグルックはその巨体に 不釣り合いな敏捷さで頭から近くの穴へ飛び込んだ。 三十分もかかってようやく網の端まで進んだ頃から、胃の辺りがむかつき始めた。 汗もあぶら汗に変わっている。『これはまずい』と思い、深呼吸をしたり、なるべく 気を散らそうとするのだが、汗は止まらない。悪いことに生唾が出てきた。今はもう 胸の辺り全体が気持悪い。ボートの外へ顔を突き出した。 私は一瞬何が起こったのか見当がつかなかったが、エルマー・ジュニアの 指す方向をみて合点がいった。エルマーとマーロンが二百メートルほど離れた 右四十五度前方に一隻のボートが我々と同じ浮氷につけているのが確認 できたのだ。ここからはよく見えないがそのボートのハンターも同じウグルック を狙っていたのだ。 マーロンが英語で口汚く罵りながら帰ってきた。エルマーはそんなマーロン をたしなめながら、仕方ないといった表情でボートに乗り込み、息子に出発を 促した。 ボートは再び波のない海を滑りだした。風は全く吹いていないのだが、やはり 空気はかなり冷え込んでおり、寒い。私は昼食の脂肪の溜め食いが効いている のか、体の芯は十分に温もっている。しかし、マーロンはしきりに、『アラパー』を 連発しだした。 浮氷の一つ一つの形は、海原を完全に覆い尽くしていた氷原が砕け動き だした際の、氷と氷の衝突によって生じた凄まじい圧力の働きを如実に物語っ ている。グロテスクな怪物のように見えるものや、一メートル以上の厚さの 平たい壁のような氷板が持ち上がり、まるで映画のスクリーンのように垂直に 突き立っているもの、あるいは何層もの氷が他の氷盤に積み重なり合ったり、 二枚の長方形の氷板が別の氷板の上で押し合うような形で釣り合って三角形の 空間を作っているものなど、いたる所でブレーク・アップ(解氷)時の凄まじい 有様をひしひしと彷彿させてくれる。   「カイーは大きな氷板上を特に注意して見てくれ」
 というエルマーの指示で、私は目を周囲の氷上に向けた。じっと眼を凝らす が、どれが氷の汚れでどれがウグルックだか皆目見分けが付かない。もし 動いてくれれば氷ではないと分かるのだが。 氷群の海を蛇行しながら一時間もぐるぐる回った頃、寒さのために屈みこんで いたマーロンが、
 「ウグルック」
と右前方の海面を指してエルマーに告げた。エルマーもほとんど同時に海面に 浮かび出た暗灰色のウグルックの頭を認めていた。
 エルマーが息子に叫んだ。
 「エンジン全速!」 私はボートの側板にしがみついた。ボートは海上を飛ぶようにウグルックに 向かって突進していく。ボート上ではエルマーが船首に伏せて、そしてマーロン が前方右側板からライフルで照準を合わせている。エルマーがライフルを構えた まま、左手でウグルックの左側につけるよう息子に指図する。グーッと船体が 傾いて、ボートが左へ移行した。しかしスピードは変わらない。ボートはウグ ルックに向かって左後方から全速で突進していく。 百メートル。八十メートル。ウグルックは我々と同じ方向に向かってゆったりと 泳いでいる。 七十メートル。六十メートル。ウグルックの背中がゆるやかな波を立てている のがくっきりと見えてきた。エルマーは船首部の見張り台の上に腹ばいになって 狙いをつけたまま動かない。マーロンの銃身も先ほどからウグルックを指している。 五十メートル。まだ近付ける。 四十メートル。そして三十メートほどの距離にまで接近したとき、エンジン音に 気づいたのかウグルックはヒョイと首を伸ばしたかと思うと大急ぎで海中に潜ろう とした、その瞬間、二発の銃声がほとんど同時に鳴った。『ドン、ドーン』という 大音響と共にウグルックは一度ほぼ全身を海面上に持ち上げるように弓形に しなり、頭から海中に没していった。派手な水飛沫が上がったが、その中に 微かな薄赤い色を認めた。硝煙の臭いが鼻を衝く。 「やった!」
マーロンが叫んだ。それに答えるようにエルマーが後ろを振り向きざま、
「間違いない」
ウグルックは沈んだまま姿を現さない。ボートはウグルックの進行方向に向けて 低速で動いている。さっきまでボートで丸くなっていたマーロンも、今では寒さを わすれ、立ち上がってウグルックを捜している。 ウグルックのように大きな海獣は一発や二発の弾で絶命することはまず起こり 得ない。ほ乳類であるウグルックは何分ごとかに浮上して息をつかなければ ならないのだが、傷を負うことによって浮上してくる感覚が短くなるのだ。そして、 当然のことながら弱れば弱るほどそのインターバルが短くなる。 ということは、ハンターにしてみれば手負いのウグルックは追跡しやすくなるのだ。 傷ついたウグルックは最初に狙い撃った地点からそう遠くへは逃げられない。 捜索範囲も狭まってくる。 銃声の余韻が去った海上を、ボートはそろそろと漂うようにウグルックを捜し回る。 もうすでにウグルックが沈んでから二分になる。全員が整然と静まり返った海面を 目を皿のようにして見回している。
 「左側だ」
エルマーが冷静な口調で言い、左手を振った。 先程の地点から二百メートルほど離れた海上にウグルックがいた。エルマー・ ジュニアがボートを全速で走らせる。
 「ウグルックの左側につけろ。左だ。左」
エルマーが息子に怒鳴る。ウグルックは何事もなかったようにゆったりと泳いで いる。ボートはウグルックの背面から全速力で近付いていく。三十メートルほどに 接近したとき、ウグルックは海中に潜ろうとした。潜ろうとして頭部が海面に付き、 背中が海上から僅かに浮き上がった瞬間、エルマーが引金を引いた。エルマーは 背骨を狙って撃ったのだ。飛沫がたち、私には当たったかどうかは分らなかった。 エルマーがライフルの薬莢を飛ばした。 再び追跡が始まった。今の銃弾が当たっていればウグルックはもうかなり弱って いるはずだ。それに、出血によって酸素がより必要になるので、浮上してくるのも 先程より早いに違いない。 ボートは何度も止まりながら、低速で前進していった。そして、およそ一分三十秒後にウグルックが浮上してきた。さっきよりも三十秒近く早く浮き上がってきたことになる。かなり衰弱している。 先程の様にウグルックの背後へ回り込む。ウグルックとボートの間に幅が五十 メートルぐらいの浮氷があるため、迂回でかなり時間を食ってしまった。だが、ウグ ルックはほとんど同じ位置から動いていない。 今度はマーロンが撃った。距離は今までで一番離れていたが、血が飛沫のなかで 飛び散るのが見えた。確かに命中したのだ。そして、またウグルックは潜った。 私は腕時計でウグルックが現れる時間を計っていた。これまでの経緯では一分後 ぐらいには息を継ぎに海上にでてくるものと推測した。そして、一分後、私は辺りを 見回した。だが、ウグルックは現れない。そのまま三十秒過ぎたが、ウグルックは まだ現れない。 何しろ、氷があちこちに浮いているのだ。たまたま我々から死角になる氷の向う側に頭を出して休んでいるのかも知れない。『見失った可能性もある』と思いつつ後ろを振り向いた時、左後方八十メートルの海面にウグルックの頭がほっかりと浮かんだ。私は思わず叫んだ。
 「左後方」 そこは先程浮上した所から百メートルと離れていなかった。ウグルックはもうあまり 泳げないほどに弱っているのだ。ボートを戻して、全速でとばした。今度はウグルック の正面に向かって進む格好になったので、ライフルを撃つ前にウグルックに気づかれた。
 「今度はすぐに浮かんでくるぞ。この前はたっぷり息をする暇があったが、今回は そんなに時間はなかったはずだ」とエルマーが私と息子に向かって言った。 エルマーの予測は正しかった。その言葉通り、ウグルックは三十秒とたたないうちに、 今さっき沈んだ所から十メートルと離れていない海面に浮き上がってきた。ウグルックの衰弱ぶりは痛々しかった。ボートが近寄っても逃げようとしない。呼吸するのに精一杯なのだ。 ボートをウグルックの真横につけた。マーロンがもりを大上段に構えて打ち降ろした。もりはウグルックに当たったが突き刺さらずに海にすっ飛んだ。そして、その瞬間、 ウグルックは最後の力を振り絞るようにして、海中に潜った。飛沫が全員に降り懸かった。マーロンがもりに付いたロープを手繰ってみると、もりの先の網鉄製の矢じりがひん曲がっている。  「なんだ、この矢じりは」  とつぶやきながら、マーロンはボートの後部へ移動し、ハンマーで矢じりを修復した。 エルマーは、
 「もう時間の問題だ」
と私に言い、別のもりを手にして、矢じりに付いたロープのもつれを解いた、そのロープ の端にはバスケット・ボールほどの赤いブイが結びつけてある。このもりを突き刺せば ウグルックがどこへ逃げようとも赤いブイが目印となるので居所をつかめるのだ。それに このブイはウグルックが絶命後に海中に没してしまうのを防ぐ役目も果たしてくれる。 ボートはもう動いていない。先程から同じ所で留まっている。三十秒もたつと、二十メートルと離れていない所へ浮き上がってきた。 全速で発進し、そして低速ですぐ側に付けた。ウグルックの左背後からエルマーが もりを突き入れた。もりが刺さってもウグルックはさほど動きを見せないし、沈もうとも しない。マーロンがもう一本のもりも打ち込む。そして、すぐさま棍棒を持つと、数回 ウグルックの頭を叩いて留めを刺す。細かい飛沫があたり一面に降り懸かる。エルマーは即座に腰からナイフを取り出すと、ボートから身を乗り出してウグルックの顎を切り裂き、そこからロープをこじいれ口から取り出すと、そのロープをボートに結わえ付けた。 エルマーの顔も飛沫でびしょ濡れだ。エルマーは袖で顔を拭うと、ロープを押さえ付けながら、「よーし、大きな氷を見つけろ」と息を弾ませて息子に言いつけた。   エルマー・ジュニアがボートを発進させて、近くの平坦な氷盤にボートを着ける。エルマー、マーロン、そして私の三人が氷の上に降りてロープを引っ張る。ウグルックを 氷上に引き上げようとしているのだが、なかなか引き切れない。足場をうまく確保して引かないと足が滑ってしまう。何度か引いて、ようやくウグルックの肩を氷上に乗せることができた。後は氷の上を滑らせれば、楽々と氷の割れる心配のない所にまで運んでいける。赤黒い線を引きながらウグルックを引っ張っていった。 マーロンが息を切らして、私に向かって、「まあまあの大きさだ」と言い、自分のナイフで仰向けになっているウグルックの腹部を縦に裂いていった。 灰褐色の皮が切られ左右に開かれると、その間に白い脂肪層が現れる。そして、 脂肪層を二三度切り進むとぽっかりと深紅の空洞が開いた。その中には赤身がかったピンク色をした腸が整然と収められている。  黒いオーバー・オールの防寒着を着込んだマーロンが手を休めた。そしてエルマーに エスキモー語で何か訊ねた。エルマーはそれにエスキモー語で答えると、マーロンに 代わってウグルックを扱いだした。   氷の白と寒色に被われたこの光景の中で、異様に鮮やかな腸の色彩が私の目に 焼きついて離れない。エルマーは臓物をすべて氷上に取り出すと、ウグルックの体内に残った血を流すためにウグルックを海中に押し戻した。そして、しばらくウグルックを 海中に浸してから、再び氷上に引き上げた。今度は氷上の臓物を選り分けていった。
エルマー家にとって必要な物と不必要な物に分けていく。いらない物はその場に残して置くとカモメがきれいに片付けてくれる。 それから、コーヒー・タイムになった。エルマー・ジュニアが氷盤上の窪みに溜まって いる水をすくって、コールマンの携帯用ストーブで湯を沸かしだした。エルマーとマーロンは陸にいる時とはうって変わった、生気のあふれた表情をしている。ウグルックを仕留めた高揚感と満足感が目の輝きにも表れている。コーヒーが入った。エルマーがまず私に最初の一杯をくれる。クラッカーを頬張りながらコーヒーを飲んだ。緊張感が解けてくると、改めてここの寒さが身にしみる。 ウグルックの身体の内部から湯気が立ち上がっている。私はコーヒーを飲み終えると、ボートの中でエスキモー・パーカと防寒ズボンを着込んだ。
 「アラパー。カイー?」
エルマーの溌剌とした声が響く。
 「少しアラパー」
と英語とエスキモー語で答える。 コーヒー・タイムが終わると、全員でウグルックをボートに引っ張りあげた。そして、 腹の中に残っていた血をコーヒー・カップで掬い海に返し、持ち帰る臓物をウグルックの腹へ詰め込んだ。それからウグルック全体をビニール・カバーで覆い、更にその上から 別のウグルックの大きな毛皮を被せた。私の座る場所はウグルックに占領されたので、その上に腰掛けるようになった。とても柔らかなクッションだ。しかも、ほのかな温もりが伝わってくる。 (つづく)────────────────────────────────────
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